top of page

n006 「言葉が立ち上がる時」

2/1からの土、日、月と、久しぶりに一般入試の試験監督だった。楽しみはほとんど無いのだが、国語の試験だけは結構楽しい。問題に採用された文章がなかなかに良い内容が多いのだ。今回は、土、月と文系で国語の試験があった。月曜日の表題の文章は、柳田邦男著。『・・・大変な恐怖とショックと喪失の体験をした人が頻繁に幽霊に出会うという体験はとにかく「事実」として受け止めて上げないといけない。・・・近代科学をベースに発達してきた医学を学んだ医師は、ややもすると科学で証明できない現象については、否定的な態度をとりがちだ。・・・人間は科学の論理だけで生きる力を得ているのではない。人間は物語を生きている存在なのだから、今日が明日につながる文脈を見つけないと明日への希望を抱けない。物語は科学の因果律では説明できない「偶然」や「不思議な現象」を含む、トータルな姿なのだ――という人間観だ。・・・』さらに、『<物と心、自と他などと明確に分割することによって、近代人は多くのことを得たが(柳田注・特に科学の発達)、そこに失われたものの価値を見直そうとする、つまり、明確に分割したトタンに失われるものが「たましい」だと考える。これは異なる言い方をすると、心と体を「つなぐもの」がたましいである、と言うこともできる。>(河合隼雄「物語を生きる-今は昔、昔は今」』『・・・人生で経験した数々のことを、<そこから何かを読み取ろうとするときの基本的な素材となるもの>としてとらえるなら、一つひとつの素材をどう読み取るか、そこには多様な「読み」の可能性が開かれている。そして、自分にとって最も納得感の持てる「読み」によって、人生の経験を一巻の長編物語として再構成することができたと時、その人は人生の道標を獲得したかのように、時には常識を超越したかのようなかたちで、新しい人生を歩み始めることができるのだ。』 ところで、今週収録したno.18は、2000年10月の文章。まさか、2005年から、カンボジアのカンポン・プロック(最初は水上集落として知った)に通うとは想像もできなかったことである。

No.16(2000.09.25)『アジア的生活』

鳴海さんからのfaxの最後に、「ふと本屋で見つけた アジア的生活 浜なつ子 講談社文庫 面白く読みました。帰ったばかりなのに また出かけたい気分です。」とあった。早速読んでみた。「ハーンが日本で、出雲の国で、うっとりしながら神秘的な<小さな妖精> を見て至福を得、・・・。あのころは、神々がもっと近くにいたのではなかったか。山の神、森の神、海の神ともっと親しくしていたのではなかったか。だからこそ私たちはもっと謙虚で、先祖を祀り、ごく普通の生活を折り目正しく生きていたのではなかったか。あるいはいつも平凡なものの中にこそ仏性を見ていたのではなかったか。近代化という玉手箱を開けてしまった浦島太郎は、もはややすらぎの国へ帰る事はできない。老いて死ぬばかりだ。あたたかい人間関係さえもてれば、人はどんな環境でも生きていけるのに・・・。」-インレー湖と浦島太郎-という章の話。

No.17(2000.10.02)『死んでもいい-マニラ行きの男たち』

「・・・最近では感じ方が少し変わってきた。スラムで出会うドランカー、・・・ダンサー、・・・ストリート・チルドレン、・・・上流階級の肥満児、・・・ビジネスマン、どんな人であれ、その人がその人らしく、真我(心の奥深いところにある自分)と共にありますように、と祈る気持ちが強くなっている。どうしてそんな気持ちに変化していったのかと言えば、それはわたしがフィリピンと出会い、人々が劣悪なスラムで生きていようと、リッチな生活を送っていようと、トータルな意味においてみな同じだと思うようになっていったからである。・・・思いこみが抜けてストリート・ピープルもわたしも権力者も上流階級の人も基本的にはみな同じだと思うようになった。・・・抱えている生の重みにおいては皆一緒。だからまずは相手の存在を受け入れることから始めよう。」「ペニス的人間」という章からはじまる浜なつこの別著である。

No.18(2000.10.11)『水上住宅』

「高床式住宅は今日でも各所で見られるので、典型的な住居形式だと考えられがちである.しかし,チャオプラヤ河流域では,・・・かつてはこちらの方も同じくらいに数多く,かつ典型的であった.それは水上住宅あるいは浮かぶ住宅である。床から屋根にかけての構造は高床の場合と変わらないが,水上住宅の場合,竹のいかだあるいは箱舟の上に建てられ,河や運河に係留されることになる。・・・典型的な水上住宅は柱間三間分の奥行きである。正面は河に面し,取りはずしが可能なパネルで構成され,昼間は河からの風を入れるために開放されている。前面のべランダには子供の落下を防止するための手すりがつけられており,朝夕は水浴び,日中は店として使われる。・・・水上に浮かんでいるのであるから,当然,住居は可動性が非常に高い。実際,時によって家々は移動し・・・」バンコクセミナーのテキスト、『水の神ナーガ』より。

Call

T: 123-456-7890   F: 123-456-7890
 

Contact

info@mysite.com

  • facebook
  • Twitter Clean
  • w-googleplus

Follow me

 

© 2023 by Nicola Rider. Proudly created with Wix.com
 

bottom of page