n009 『直角平行垂直のない世界』
まったく、1週間がこんなに短いとは。先週もいろいろなことがあった。近江八幡では南條設計室の南條さんと久しぶりに会う。研究室のM2吉浦君が今年からお世話になることになっている。よろしくお願いします。つかのまの休日を友人達と暖かいところで過ごした後、奈良でやっている古い民家の改修設計が竣工間近。直角平行垂直のない世界をどうやって新しい空間にしていくか。すべて現場で考える面白い仕事だが、木造の面白さも再確認。古い構造体を残し、取るものは取って新しく枠と建具をつけることで、驚くような新鮮な空間に変わっていく。床はすべて45ミリ厚の杉板。土間は床暖房を入れて、いぶしのレンガ敷き。増築されていたところは、これはもう新しくインハウスで構築。天井の骨組と仕上げを残し、新旧の共存で、これもまた新鮮な空間に生まれ変わる。庭の整備は学生諸君がやってくれることになり、東京から井上洋司さんに来てもらい、その指導の下、10人以上が土方状態。それをしり目に僕は久しぶりに星田君と団地再編の意見交換。今年は専門家養成講座を企画していて、プロジェクトのまとめにつなげたい。63回目の誕生日は近しい友人達と。後期の入試監督は文系で、楽しみの国語の問題文は、吉見俊哉『大学とは何か』。大学都市に起こった出版産業の話である。Jグリーン堺のパーティでは、若い選手たちに会って、これからサッカーが楽しみになりそう。「(建築基準法の)86研究会」の報告は楽しい意見交換の場でもあり、なんとかこれを社会化したい。1月に折れた歯のためにマウスピースを直してもらったのも今週だ。
No.25(2000.11.27)『ヴォルテール』
フランスの思想家であり文学者でもあったヴォルテールは、ヨーロッパの十八世紀を「ヴォルテールの十八世紀」と呼ばしめたほど、全ヨーロッパに多大な影響を与えた啓蒙思想家である。彼の代表的著作のひとつに、『ザディーグ』(彼自身の、名声と失意の間を行き来する様をテーマにした哲学風のコント。1747)がある。今週は、このなかの一節をクイズ風にとりあげてみたい。なかなかに、味のある問題で、答えである。ぜひ、考えてみて欲しい。答えは来週のこのNEWSで!この世の中に存在するすべての事物のうち、もっとも長くて 同時に短いもの/もっとも早くて 同時にもっとも遅いもの/もっとも小さく切り刻め 同時にもっとも大きく拡大できるもの/もっとも軽く扱われ 同時にもっとも惜しまれるもの/それがなければ何もできず 細かなことでもすべて包み込み/すべての偉大なものに生命を吹き込むもの/それは何であろうか。
No.26(2000.12.04)『ヴォルテール-2』
-これ以上に長いものはない。それは永遠を測る物差しなのだから。/これ以上に短いものはない。それは願望を実現させるにはあまりにも短い。/これ以上に遅いものはない。明日を心待ちにしている者にとっては。/それは無限に広がり、無限小にせばめることができる。/それは皆が皆、ないがしろにし、皆が皆、後ろ姿を惜しむ。 /それは存在していなければ、誰も何も行うことができない。/それは後の世のため、価値とはならないものを忘却の海に沈め、真に偉大な行為に永遠の命を与える。-答えは「時間だ」。さて、火曜日には早々と正解を送ってくださった方がいる。「「時の流れ」とか「時間」というのはどうでしょうか。」スタジオ・レムのS.TOMOさんからであった。いつも、夜中にみてくださるそうで、感謝!感謝!せっかくなので、スタジオ・レムのHPの紹介をしてしまおう。 httm:http://rem.on.arena.ne.jp/
No.27(2000.12.11)『現地審査』
御坊市島団地の再生事業に関して、某賞の現地審査ということで、東京から審査委員が10人訪ねてくださった。プレゼンと現地視察が行われ、公営賃貸住宅をコーポラティブスタイルでやることの意味と効果等、現地の事情と出来た空間を確認しながらの質疑応答がなされた。住居プランについては、自由勝手なプランというよりは、続き間形式やLDK形式の地域型類型化の結果になっていること、南廊下については、実際に孤独死になりかねない老人が救われたこと、狙いは住民の自立再生が多方面に渡り必要なこと、等の話が引き出された。出来た住宅は、写真で見るよりずっと良いという評をいただいたが、集合住宅の建築写真はここが一番難しい。完成4期分の微妙な違いの集積感、ほっとするその空気を建築と一体の写真にするのが難しい。そういえば、今年度の和歌山県ふるさと建築景観賞をいただいたそうで、来週の月曜日が表彰式。