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n012 『たる源』

「オヤジが使っていた風呂桶がこわれた。何の変哲もない木の桶だが、長年使っていて愛着があるから修理しようとしたが、直してくれるところがない。そこでインターネットで調べて、京都のたる源という桶屋さんを探し出して桶の修理をお願いした。驚いたことに、たる源のおばあちゃんがその桶を見て、これは五十年前に河野一郎さんにつくった風呂桶だ。なんとまあ。僕も子供の頃、その風呂桶を風呂に浮かべて海戦を戦わせたりしていた。戻ってきた風呂桶をよく見ると、ものすごーくうすくなっているが、『京なわて たる源』とたしかに裏に焼いてあった。大事に使えばあと五十年は使えるそうで、オヤジはペシ坊にこの話をよーく聞かせていた。そりゃ次に修理に出すのは僕じゃなくてペシ坊だ。(河野太郎)」・・・「いま困っている最たるものは、原木の払底なのだそうである。コウヤマキが最適なのだが、年々、原木の入手が困難になっているという。コウヤマキが少なくなったのではなく、伐り出す木樵がいなくなってきたからだという。あの木は、あっちの山に一本、こっちに一本、という具合に生えているのだそうで、伐り出す費用が高くついて採算が合わないとのことだった。いまのところは、原木問屋がなんとか探し出してくれているが、そのうちに自分自身で山へ行くことになるだろうとのことだった。《たる源》の品物を求めてくれる高級料亭や好事家からも、引く手あまたなのだが、材料がなければ仕事が出来ない。思うようにならないものだと、困った顔をされた。(ココログ・上方落語の町々)」・・・謝恩会で、研究室の学生たちからのプレゼントが、なんと、たる源の湯桶(風呂桶)だった。よくぞ・・・。(笑)

No.34(2001.01.29)『ミラノ・デザインは思想運動』

「つい数年前までイタリアの大学にデザイン科というものはなく、デザインをするのは家具からインダストリアルまで建築を勉強してきた連中。建築家は「場」を考える、つまり、「住まわれ」「生きられる」空間をつくるように教育されているので、たとえモノでもそれは「生きられるもの」「暮らし方を提案し、助けるもの」として考える性質があります。これは市場中心のアメリカと違い、ヨーロッパ的アプローチと言えるでしょう。建築家には、デザインを物を高く売るための手段としてではなく、人間とモノとの間にある「神聖」とも言えるコミュニケーションを探るものとする認識がありますから。・・・真っ向から語り合う知的土壌がありました。それが人間的デザインの成功の秘訣だったのかもしれません。ラディカルデザインともいわれるミラノデザインは表現のスタイルではなく、思想運動なのですよ。」エットーレ・ソットサス

No.35(2001.02.07)『ガララテーゼ』

急に、ガララテーゼ(モンテ・アミアータ)の集合住宅を見たくなって、週末を利用してミラノに行って来た。いつも思うことだが、ヨーロッパの公共交通機関の安さには感心する。しかも、1DAYや2DAYといった乗り放題のキップは、本当に便利だ。市販の地図が見やすく、バスのルートや通りのリストが載っているので、住所さえわかればどこへでも行ける。さて、いわゆる団地形式の郊外住宅地区にあって、他の分散配置された住棟と異なり、アイモニーノ棟とロッシ棟は、異質の固まりとして存在している。特に前者は細かな細工の割にはボリューム感が強く、都市の中に、つまり、街区型の市街地の中にあるほうがふさわしいと思わせる。再確認したかったのは、もちろんロッシ棟。180mの長さの柱廊は、ただただ空間として素敵だ。細く、左官で塗っただけの柱の素っ気なさが、空間に凛とした感じを与え、寂しく、やさしい。

No.36(2001.02.13)『都市の憂鬱』

「いかに病気と呼ばれようともある種の人びとにとって、日記はただ毎日つけるだけでは十分ではない。それを繰り返し読み、かつ意見を追加してゆかなければいけないのだ。再読と記述の追加とは、日記を書くという行為の何か本質的な部分につながっている。というのも、ここでは日記を一つの保存装置、とりわけ《自己》を保存する容器と考えたいのだが、何であれ、また何のためであれ、保存するということは、その保存したものを将来いつか取り出してくるのを前提としているはずだからである。・・・だが、それにしても、保存するものがジャムであるのと自己であるのとでは、保存の姿勢がずいぶんと・・・たえず自己にまつわる記憶を喚起し、それを想像力に結びつけて、存在の感覚を確認すること・・・一見したところ苦渋にみちてはいるが、それでも他のなにものにも換えがたい楽しみであったにちがいない。」富永茂樹『都市の憂鬱』

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