n016 『ヴェネツィアの贈り物』
「三方を囲まれた広場に足を踏み入れてようやく、ラングドンはヴェネツィアならではの贈り物を心から堪能した。 音だ。 自動車やエンジンつきの乗り物が一台も走っていないと言ってもよいこの街には、都市に付き物の車の往来も地下鉄もサイレンもなく、聞こえるのは人の声や鳩の鳴き声、屋外のカフェで演奏されるバイオリンの音色など、機械とは無縁の音が織りなす響きだけだ。世界じゅうどこを探しても、ヴェネツィアのような音がする大都市はほかにはない。 西から遅い午後の日差しが注ぎ、サン・マルコ広場の石畳に長い影を落としている。ラングドンは鐘楼の高い尖塔を見あげた。広場にそびえ立ち、昔のままにヴェネツィアの空に君臨している。塔の上部の柱廊に何百もの人々が詰めかけているのが見えた。そこにのぼることを考えただけで体が震え、ラングドンは前を向いて雑踏のなかを歩きつづけた。」ダン・ブラウン インフェルノ(下)
No.46(2001.04.23)『聴竹居・森の墓地』
竹中工務店が、季刊”approach”という広報誌を出している。環境開発研究所時代にご一緒した竹下昌毅さんが届けてくださる。毎号特集を組んでいるが、昨年の冬号は藤井厚二の聴竹居。JIAの住宅部会の見学会で見れそうだったのだが、訳あって残念ながら中止になってしまった。最近、-環境と共生する住宅-というサブタイトルの「聴竹居」実測図集が、竹中工務店設計部編で、彰国社から出版された。早速注文した次第。さて、今年の春号は、「森の墓地」の特集だ。アスプルンドが一生をかけてかかわった作品である。自然をいじりながら、自然の雄大さや深さを我々に感じさせる、きわめて優れた環境デザインだ。まさに、かたちのデザインは人間の歩みを誘うものであり、単にapproachといいながら、奥の深い、デザインの本質を感じさせる。人間の敬虔な心をゆさぶることが、デザインという行為を介して可能になる。ザ・デザイン
No.47(2001.05.01)『大阪ええはがき研究会』
数年前から参加している、大阪のまちづくりに自主的な提言をしようという研究会で、絵はがきが話題になった。調べてみると、デザインセンスに乏しく、都市の魅力を喚起するものにはほど遠いものしかなかった。自分の採る写真だけでは表現できない文化(季節や風習などその時には撮りきれないが、都市の特徴として感じられるものなど)、或いはその雰囲気を伝えるものといて、ポストカードは都市の文化度を測るものとも言えよう。この際、われわれで大阪の新しいポストカードをつくってしまおうということになって、趣旨に賛同する人々を募り、「大阪ええはがき研究会ができた。参加メンバー独自の視点で試試品も作り始められている。9月には、広く市民に公開し、意見を募ることも決まっている。既に多くの参加者が集まっているが、実践活動に興味ある方の参加はこれからも歓迎である。事務局 pxn14556@nifty.ne.jp 迄
No.48(2001.05.08)『スペースブロック』
「例えばこれはTの字が上を向いた形をしてまして、こっちはTの字が横を向いている。これはちょっとバスルームとかも含めた積み木になってますから正味の空間でいうとまったく同じ形なんだけど、横倒しと立っているのと隣り合った部屋になっているのとというふうなことが起こっています。・・・これは今の断面のT型の部屋で、先に積み木があってそこに後からキッチンどこにいれようかとか、玄関どこに付けようかとか言ってやってるわけですから、思わぬ所から光や風が来るという効用があります。普通に機能的にプランニングするっていうのとはまったく逆の、そういう意味では邪道のような作り方です。ただコストの問題もありますので、これの場合は水回りやなんかは単純にシャフトにして水平力も受けるようにしてっていうふうに、ある程度合理的には解いています。」昨年のJIAまちづくりセミナー/小嶋一浩氏の講演より