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n025 『天馬を振った男』

前回の話の続きになる。ちなみに、横山典弘のゴールドシップは昨日、快勝した。「友人から、日本ダービーで名馬のお話をテレビでやってるよ、と知らされた。が、ワタシは帰宅途中で観ることかなわず。中島啓之騎手のお話をやってたよ、と教えてくれた。中島騎手。デビューからしばらくは、ラストスパートが早く「あわて中島」と呼ばれて、勝ち星こそ重ねるものの八大競走などの大レースには縁のない地味な騎手であった。しかし、時々ときおり人気薄で大穴を出す「万馬券ジョッキー」として、穴党ファンの間では有名であった。今でいうと、江田照男騎手みたいなものかしら。その真骨頂は1973年の有馬記念でストロングエイトに騎乗し、10番人気ながら圧倒的人気に推された当時の大人気馬ハイセイコーを破って八大競走を初制覇。二着もニットウチドリという馬で、万馬券になった。その後、コーネルランサーでダービー優勝。史上初めて父子でダービージョッキーとなる快挙を成し遂げた。その時のインタビュー。晴れて栄光のダービージョッキーとなったにもかかわらず、「今の気持ちを誰に伝えたいか?」というアナウンサーの質問に対して、中島騎手は躊躇して答えることができなかった。特定の人物の名前を挙げることで、名前を挙げられなかった人たちを落胆させたくないための配慮であったという。中島騎手は人情に厚く、「誰にもどんなときも嫌な顔をしたのを見たことが無い」という人であったらしい。そのような常に相手に気を遣う好人物で、誰も悪くいう人はいなかった、まさに誰からも愛される好人物であったらしい。とりわけ騎手仲間からの信望は厚いものがあり、「アンちゃん」の愛称で慕われた。トウショウボーイと言われる馬がいた。当時は天馬と呼ばれて快速馬でありました。当然ダービーの最有力候補。このトウショウボーイには池上騎手が乗っていた。ところが、ダービーでクライムカイザーという馬にラフプレーぎりぎりの出し抜けを食らわされ、2着に甘んじる。で、次の札幌記念でも2着に負けてしまう。この連敗で、池上騎手はトウショウボーイに乗せてもらえなくなってしまった。ワタシが思うには、ちょっと油断があったにせよ、妨害すれすれのラフプレーをかまされたのと、トウショウボーイに不利なダートの札幌記念での負けを池上騎手に負わされるのはかわいそうな話やと思うなあ・・・。トウショウボーイは、2000mの日本レコードをディープインパクトに破られるまで持っていた。1分58秒9。このタイムはレコードを1秒も更新するタイム。当時は2分を切る馬は皆無で、この時の実況アナウンスを務めた杉本アナウンサーは「恐ろしい時計です、これは恐ろしい時計です」と実況した。そういうこともあって、トウショウボーイという馬は騎手なら一度は乗ってみたい、という馬であった。さて、有馬記念。トウショウボーイの馬主さんは競馬の神様、大川慶次郎さんに有馬記念の騎手を相談した。神様の慶次郎さんは「そりゃ池上君でしょ」と答える。すると、馬主さんは「自分もそうしたいけど周りは納得しないんだ」と。では「中島君では?」と慶次郎さん。馬主さんは「中島君は名古屋のレースで、どうしても乗らなければならない馬があって引き受けてくれないんだ。」との話。そこで慶次郎さん中島騎手の先約を調べてみた。すると、びっくりするぐらいのしょぼい馬であった。慶次郎さんは「いくら先約といってもトウショウボーイに乗るなら、先約の馬主さんも納得するだろうから、私がその先約の馬主さんや調教師さんに話をつけてもいいよ」と提案した。すると、中島騎手、「トウショウボーイは池上の馬です。私が取るわけにはいかない。誰が何といおうと乗らない。いくらお世話になっている慶次郎さんでも言うことは聞きませんよ。」と頑として聞かなかった。そして、「先輩の俺が池上の馬を取り上げちゃいけない」とも。中島騎手は自分がレースに乗れなくても、くさらずにトウショウボーイに稽古をつけて、レースに向けて仕上げている池上騎手をみていたのねん。誰もが「あんちゃんがそう言うんなら仕方がない」と納得した。中島騎手という人はそういう人でありました。慶次郎さんは中島騎手がそう言って断るのなら、関東の騎手は乗りにくいやろう、ということで関西の武邦彦騎手(武豊騎手のお父上)を提案した。この年の有馬記念、2500mの日本レコードでありました。1985年、中島騎手は不調を訴える。どうやら肝臓の病ということがわかり、入院する。が、病院を抜け出して馬に乗り続ける。NHK杯でトウショウサミットという逃げ馬で優勝する。これでトウショウサミットはダービーに出走する権利を得た。この日の朝、騎手仲間が中島騎手を起こしに行ったとき、3回呼んでも中島騎手は起き上がることができなかったらしい。その直後に肝臓がんであることがわかった。「どうせ死ぬなら、今年のダービーまでは乗り通したい」と言って病院を抜け出し続け、あくまでも騎手として人生の最後を迎えることを望み、お医者さんに懇願して馬に乗り続けた。オークスではナカミアンゼリカという馬で2着。ノアノハコブネに差されてしまった。今にして思えばノアノハコブネ、憎たらしい馬であります。が、生涯最後の大レースの2着。トウショウサミットのダービー。重馬場で、内は特に荒れがひどい。スタートはよくなかった。が、無理矢理中島騎手は手綱をしごきながら、無理矢理先頭に立とうとする。トウショウサミットは軽快な逃げが持ち味で、中島騎手も逃げは上手であった。今ここで脚を使えば、しまい掴まることは判っていただろう。しかしそれでも先頭を切る。何か意志を感じさせるような逃げやった。しかし、4コーナーで力尽き、28頭中18着。近しい人でさえ、中島騎手の病状を知ったのは、ダービー後でありました。そして、お葬式では号泣して、取り乱す人が続出したらしい。ちょうど、この年ワタシは社会人一年目で大っぴらに、大手を振って???、馬券を買うことができて、オークスではナカミアンゼリカの馬券をいっぱい持っていたのを思い出す。残念ながら、ノアノハコブネを持っていなかったので、オケラ・・・・・。何せ、ノアノハコブネの単勝が62.7倍。 オトコマエでカッコエエの人のお話でした。」(羽林長門守の閑人俳句日記、日々是好日)結局、トウショウボーイを断ったのが縁で、その後トウショウの馬は奥平厩舎に預けられ、中嶋がそれらに乗ることになる。そして、トウショウサミットで最後のダービーを迎えるのだ。ちなみに、ストロングエイトの2着だったニットウチドリに乗っていたのが横山典弘の父、横山富雄。競馬の魅力ってこういう話が延々と続いていくことにある。そういえばこの有馬記念、東大大学院に行った例の友人から祝いの手紙が来たっけ。

No.73(2001.11.01)『住宅地の風景』

先日、近鉄特急で賢島に行った。行きも帰りも明るいうちで、車窓の景色に見入ったが、以前にも書いたように(NO.51)、日本の自然の風景はまだまだ美しい。しかし、住宅の混じった風景は、最悪だ。古い小集落は、自然の中に共生した風景をつくっているのだが、新しい住宅は、なぜ、あんなにも自然の風景になじまないのだろうか? このままでは、電車に乗る楽しみもなくなってしまいそう。われわれは、建築や環境デザインの分野で、一体なにをしてきたのだろうかと、改めて、寂しくなった。自分たちの関わっていることだけが良いというのでは、いつまでたっても町や社会は良くならない。つくることだけではなく、出来たものが<なぜ、悪いのか><なにが悪いのか>を考えないと、次のレベルには行かないだろう。この点で、市民レベルの合意(開発業者も含めて)がないと、日本の風景は益々ひどくなっていきそうで、とっても怖い。

No.74(2001.11.07)『無魂洋才?』

「・・中国大陸から、進んだ文明が嵐のようにこの国に襲いかかってきた。そのとき、人々は、「和魂漢才」と言う言葉で、外からシステムはいれるが、日本固有の精神である「和魂」だけは失うまい、と必死に努力したのだった。明治になったとき、人々は西洋から入ってきた学問や知識を一所懸命に学び、近代化を進めた。そして、こんどは「和魂洋才」という言葉でそれに対抗しようとした。・・・アダム・スミスが説いたように、市場原理の背後には「見えざる神の手」が働いているのだ。そこには資本主義の「魂」というものがある。ところが、日本はその「魂」を無視して、形だけをいれたにすぎなかった。・・・戦後の日本人はとりあえず「無魂洋才」でやってきたのではあるまいか。「洋才」だけを外国からもらうが、魂はいれない。自分たちの魂もいれず、外国の魂もいれない。いうなれば、バックボーンのない「無魂」の状態だ。」五木寛之

No.75(2001.11.12)『都市に顕れる渦』

先週の金曜日は、第10回都市環境 デザインフォーラム・関西。「街の遺伝子」というテーマで、基調講演に映画監督の大森一樹氏。氏は、創造力の公式として、A+B=Cを提示され、自身の映像も交えて興味深い話をされた。氏は、創造力とは、プラスの話だろうと言われたが、夜の懇親会で、コープランの小林さんたちと話していて、これからの環境デザインでは、必ずしもプラスに限ったことではなく、マイナスを上手に使うことが重要だというような話に盛り上がった。今回の フォーラムは、企画から参加者まで、若い人たちでにぎわったが、会場からの質問時に少し気になったのは、歴史や場所を読むということの意味や、解釈の仕方についての議論、訓練の不足であった。同時開催の第4回フォトコンテストは、標題の通りのむずかしいテーマであったが、会場展示、参加者の投票により、なんと、僕の「マラケシュ・夕暮れの広場」が最優秀を頂いた。感謝!

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