n058『素質ある未勝利馬にチャンスを』
「先日、うれしい出来事があった。10月31日の福島10R磐梯山特別で、5歳未勝利のテンカイチが36戦目にして初勝利を挙げた。同馬は私の厩舎に在籍していたが、ダートは、まったく走らず馬券圏内に絡んだ3着2回も、小倉芝2600㍍と新潟芝2000㍍だった。3歳未勝利戦が終了すると、勝ち鞍のない馬のほとんどは、地方競馬へ移籍するか障害に転向する。しかし、ダートが不得手て障害試験にも2回落ちた同馬が現役を続けていくには、平地の500万に出走するしかなかった。未勝利馬とはいえ芝の長距離適性を見込んでいた私は、定年後も馬主に頼んで現役を続行させてもらったが、その思いがやっとかなったわけだ。テンカイチのように芝の長距離でしか能力を発揮できない奥手の馬は、芽が出る前に競走を終えてしまうことも多い。なんとももったいない話だ。その中には現役を続けることによって重賞を勝てた馬もいるはず。現に00年から06年まで走り、一度地方に移籍しながら再び戻って8歳で鳴尾記念を制したメジロマントルという馬がいる。中央デビューで、9戦未勝利、北関東競馬へ移籍してからも6戦1勝とパッとしなかったが、再転入した6歳の夏から7歳にかけて4連勝し、その後オープン入り。重賞ウイナーにまで登り詰めた。JRAの現行制度では3歳秋までに勝てなかった馬は4大場(東京、中山、京都、阪神)の平地戦に出走することはできない。またローカル場の500万(1000万も可能)に出走できたとしても8着以内に入らなければ馬主への出走手当は甲府されない、とある。よほど馬主と調教師の信頼関係がなければ、在籍を続けることは困難な状況なのだ。このままでいいのか。馬主と調教師が「能力あり」と判断した未勝利馬は出走できる競馬場をローカルに限定せず、すべての場でその枠があれば出走できるようにしたらいい。特に長距離戦はフルゲートにならないことが多く、未勝利馬でも出走できる可能性が高いのだから。素質ある未勝利馬の出走機会を増やすことが、長距離戦の裾野を広げることにもなる。第2、第3のテンカイチを出すため、JRAは実現可能なことをただちに実行に移してほしい。・・大久保洋吉元調教師もの申す」
No.169(2003.9.1)『田中一光展とフィンランドの教会展』 先週、東京での会議の後、練馬から大江戸線で新宿パークビルへ、元所員の大屋君が入賞した作品展を見た後、大江戸線で清澄白河へ足を伸ばし、東京都現代美術館へ。田中一光回顧展が8月一杯まで。平日の午後なのに満員で鈴なり。精力的な作品群を鑑賞して、感心するばかり。重たかったが¥3.800-の回顧展の記録本を買って帰阪も、見た人は皆、安い!と。11月には大阪でもやるそうで、必見だ。その後、大江戸線、浅草線を乗り継いで、五反田へ。東京デザインセンターのPYHA TILA<聖なる空間>展へとはしご。-フィンランドから12の教会とムーミン作者トーベ・ヤンソンの島-と題された小さな展覧会だが、昨年見たシレンのオタニエミ礼拝堂などが、映像と模型、パネルで紹介されている。オタニエミ礼拝堂は、安藤の水の教会にインスピレーションを与えたと言われるが、田中一光展のペットボトルによる展示構成も安藤だ。 No.170(2003.9.8)『コラボレーションによる地域住宅・まちづくり』 土曜日は建築学会大会で、表題の研究協議会。司会は森本信明、副司会を豊永信博、趣旨説明を藤田忍。青森から高坂幹、北原啓司、山谷を大崎元、中島明子、徳島は久米将夫、重村力、長崎は清水耕一郎、鮫島和夫、御坊を私と平山洋介というメンバーで報告。地方の元気な話が紹介され、平山も御坊(島団地建て替え)を持続的に丁寧に仕事が出来たと紹介した。しかし会の最中、私の頭を駆け巡っていたのは、小さなスケールで物事を考えない大阪のこと。考えられないということだとしたら、方法論を改めなくてはいけない。いまだに、乱暴な方法(私見だが)で、標準設計タイプの乱暴な公営住宅が再生産されている現状を、どうしたらよいかということだ。小さなスケールで考えるとは、言い換えると、「ローカルなものを基本において物を考えていく」という視点だが、大いなる地方都市大阪の問題認識が間違っているように思えてならない。 No.171(2003.9.16)『HERO』 紀元前200年、戦乱のさなかにある中国。のちに始皇帝と呼ばれることになる秦王のもとに、一人の男がやってくる。男が手にしているのは、一本の槍と、二振りの剣。それぞれには、中国全土の中でも最強といわれる三人の暗殺者の名が刻まれていた。絶え間なく命を狙ってくる暗殺者たちを避けるため、百歩以内の距離には誰も近づけようとしない秦王。その秦王への拝謁を許されたこの男の名は「無名」。」久しぶりに劇場で映画を見た。見終わった感想は複雑で、満足感と不満足感が別々に心の中を漂う。僕の好きな酒に、ジンミルクというのがあって、これは、珍しくバーテンダーの友人からは評判が悪いのだが、カクテルとは異なり、口の中でジンとミルクが同時に存在する。液体としては分離もせず、一見すればただの牛乳。同じく僕の好きなジンウォーターは、一見すればただの水。でも、どちらも美しい。映画も、確かに美しかったが。